ベレス気腹とは?オペ看10年が手順・注意点・気腹法の違いまで徹底解説

腹腔鏡手術のオリエンがあって、術者が「ベレス使います」と言った瞬間——ドキッとした経験はありませんか?
普段はオープン法が多い施設だと、急にベレスと言われても準備や手順に戸惑ってしまいますよね。

この記事では、ベレス気腹の仕組みから手順、他の気腹法との違い、看護師が押さえるべき観察ポイントまで、オペ看10年の私が現場目線で解説します。

目次

ベレス気腹とは?仕組みをざっくり理解する

ベレス気腹とは、ベレスニードル(Veress needle)という特殊な針を使って、お腹の中に炭酸ガス(CO₂)を送り込み、手術ができるスペースを作る方法のことです。

ベレスニードルの構造

「針を直接お腹に刺して、腸とか刺さらないの?」と不安になりますよね。
実は、ベレスニードルは非常に賢い構造をしています。

  • 外側: 鋭利なカッティングエッジ(針)
  • 内側: 先端が丸いバネ式のスタイレット(内筒)

腹壁(皮膚や筋膜)といった「硬い組織」を通過している間は、鋭利な針が先行します。
しかし、腹膜を突き破って何もない腹腔内に入った瞬間、バネの力で内側の「丸いスタイレット」がカシャッと飛び出すのです。

この仕組みにより、もし針先が腸管に触れても、丸い先端が当たるだけなので傷つけにくい構造になっています。

気腹の仕組みと圧力

腹腔鏡手術では、お腹をドーム状に膨らませてカメラや鉗子を動かすスペースを作ります。
ベレス気腹では、この針から二酸化炭素を注入し、気腹圧を通常 8〜12mmHg 程度に保ちます。

私が新人のときは、なぜベレスを使うのかまったくわかっていなくて、「ただ準備が面倒な針」だと思っていました。でも、「少しずつゆっくり安全に腹腔を広げるための工夫」だと知ってからは、ドロップテストの介助一つにも意味を感じられるようになりました。

気腹法の種類と違い|ベレス法・オープン法・直接刺入法を比較

手術室によっては、ベレス法以外の手法がメインの場合もあります。代表的な3つの方法を比較してみました。

気腹法方法安全性主な使用場面
ベレス法
(クローズド法)
ベレスニードルで盲目的に刺入後、気腹開始
(二重構造で軽減)
標準的な腹腔鏡手術全般
肥満症例など
オープン法
(Hasson法)
臍下を小切開→直視下で腹膜を開けトラカール挿入腹部手術歴あり
癒着が強く疑われる場合
直接刺入法トラカールを直接盲目的に刺入低〜中術者が十分な経験を持つ場合
緊急時など

どの方法を使うかはあくまで術者の判断ですが、看護師として事前に術式確認しておくと、器械の準備がスムーズになります。
特にオープン法では、筋膜を切開・把持するための甲状腺鉤やコッヘル、モスキート、そして専用のハッソン用トラカール(固定用の糸巻きがついたもの)などの準備が必要になるので要注意です。

ベレスニードル刺入の手順と準備【器械出し看護師が知っておくこと】

では、実際のオペでの流れを確認しましょう。器械出し看護師が一番緊張する「刺入」の場面です。

  1. 刺入前の準備
    ドレーピングが終わり、いざ刺入となると、術者は腹壁を持ち上げます(腹壁牽引)。
    看護師は必要に応じて、術野の対側から腹壁を持ち上げる介助を行います。皮膚切開用の尖刃(No.11など)もすぐに渡せるようにしておきましょう。
  2. ドロップテストの実施
    これが最も重要な確認作業です。
    ベレスニードルが腹腔内に入ったと思われるタイミングで、術者は針に「生理食塩水を入れたシリンジ(5〜10mL)」を接続します。
    自然落下、あるいは軽く吸引して、スムーズに水が流れ込む(または引けない)ことを確認します。
  3. 気腹開始〜設定圧到達までの確認
    テストOKなら気腹チューブを接続します。「気腹開始します」と声をかけ、最初は低流量(Low Flow)からスタートします。
    気腹圧モニターを見て、圧が異常に高くならないか確認します。
  4. ベレスニードル抜去とトラカール挿入
    十分にお腹が膨らんだら(設定圧 10〜12mmHg程度)、ベレスニードルを抜き、その穴をガイドにして最初のカメラポート(トラカール)を挿入します。

私が新人のときに一番焦ったのが、ドロップテストのタイミングです。術者が「シリンジ!」と言ってから慌てて生食を吸って渡そうとして、「遅い!」と怒られたことがあります。
ベレスを使うとわかっているときは、器械展開の時点でシリンジに生食を準備しておくのが鉄則です。

💡 ポイント
ドロップテストで液体が流れ込まない場合は、針先が腹膜前腔や臓器内など、正しい位置にない可能性があります。無理に進めず、術者に報告しましょう。

外回り看護師の観察ポイント【気腹中〜気腹終了まで】

外回り看護師は、気腹操作によって患者さんの体に異変が起きていないか、常にモニターする必要があります。
フェーズごとの観察ポイントをチェックリストにまとめました。

気腹開始時の確認

  • 気腹圧の設定値(通常 8〜12mmHg)を確認
  • 初期流量が低いことを確認(ベレス法では少流量から開始)
  • 腹部の膨隆を目視確認(左右対称に膨らんでいるか)
  • 麻酔科医・術者と「気腹開始します」の声かけ確認

気腹中の観察

  • SpO₂・呼吸数・換気量の変化をモニタリング(横隔膜圧迫による変化)
  • 血圧・心拍数の変動(気腹圧上昇→静脈還流減少→血圧低下の可能性)
  • 皮下気腫の有無(首〜胸部を触診し、握雪感がないか確認)
  • 術野モニター映像の確認(最初のポート挿入時に腸管・血管損傷がないか)
  • 気腹時間の記録

気腹終了・トラカール抜去後

  • 腹部の平坦化を目視確認(ガスが抜けているか)
  • ドレーン排液の性状(血性でないか)
  • 術後の肩・横隔膜痛リスクの把握(腹腔内残存CO₂による関連痛)
  • 記録への気腹圧・気腹時間の転記

ベレス気腹でよくあるトラブルと対応【現場で見た実例】

いくら安全な構造とはいえ、トラブルは起こります。私が経験した事例も含めて、代表的なトラブルを知っておきましょう。

腸管・血管損傷

早期サイン: 気腹圧が設定値に達しない、腹部の左右非対称な膨隆、カメラ挿入直後にモニター画面が赤い(出血)、便汁が見える。
対応: すぐに術者・麻酔科医に報告し、開腹移行の準備セット(開腹セット)が近くにあるか確認します。

皮下気腫

気腹ガスが皮下組織に入り込んでしまう現象です。触ると「プチプチ」「ジャリジャリ」という雪を握ったような感触(握雪感)がします。
軽度であれば経過観察で吸収されますが、頸部や顔面まで進行すると気道閉塞のリスクがあります。「首元までプチプチしています」と明確に報告ラインを決めておくと安心です。

ある日のオペで、ポート挿入の際に腸管に小さな穴が開いてしまい、急遽縫合対応になったことがあります。術前から「癒着が強いかも」という情報があった症例でした。


「術前から腸管癒着のリスクを把握していれば、もっと早く開腹セットを出せたのに」と悔やんだ経験でした。外回りとして術前サマリーを必ず確認し、「癒着あり=ベレスでもリスク高」と予測するようにしたのはそれからです。

気腹圧が上がらない・安定しない

機械の故障を疑う前に、以下をチェックしましょう。

  • 針先の位置不良(腹腔内に入っていない)
  • 気腹チューブの接続部のゆるみ
  • チューブが術野のドレープの下で折れ曲がっている(意外と多い!)
  • ガスタンクの残量切れ

まとめ|「なんで?」を大切に

ベレス気腹について、明日のオペで役立つ知識を整理しました。

  1. ベレスニードルは「安全に腹腔を広げるための二重構造の気腹針」
  2. 気腹法には種類があり、どれを使うかによって準備する器械が変わる
  3. 外回り看護師は気腹開始〜終了まで呼吸・循環・皮下気腫を継続観察する

器械出しでも外回りでも、「手順だからやる」のではなく、「なんでこの方法を使うの?」「なぜ今は低流量なの?」と問い続けることが、安全な手術看護につながります。
私が10年かけて学んだことを、少しでも皆さんの現場に役立てていただければ嬉しいです。

手術室の働き方そのものに戸惑った時期の話は、新人看護師で配属先が希望と違った話 にもまとめています。

こうした現場経験を、私はブログという形でも発信しています。興味があれば 手術室看護師がブログを書くメリット も読んでみてください。

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この記事を書いた人

エヌプロのアバター エヌプロ 手術室看護師

ビジネス思考を看護に生かして働きやすい看護師ライフを模索しています。手術室で働いて10年。社畜のような日々にも耐えながら細々と活動を継続しています。

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